任意後見制度を利用する場合、本人の判断能力がしっかりしている時に「任意後見契約」を結ぶことが必要です。
また、専門家に依頼した際、任意後見契約だけでは、依頼人の方の要望に十分に対応できない部分が存在します。
ここでは、その補完しきれない部分の説明と対応措置についてご説明いたします。
任意後見発効まで空白の時間がある
任意後見契約は、前述のとおり、契約直後から後見が開始されるわけではなく、ご本人の判断能力が低下した後、任意後見人が正式に就任することで効力が発生します。これは裏を返すと、任意後見契約を締結後、ご本人の判断能力が低下していても、裁判所への正式な手続きを踏まない限り、任意後見人の予定者であっても、基本的に何もすることができません。
死後の事務ができない
任意後見制度の契約は、被支援者が亡くなると同時に修了してしまいます。そのため、もし一人暮らしで親族のいない人が亡くなった場合の、葬儀・墓の手配・家の片付け・財産管理を行ってもらえず、被支援者が不安を持ってしまいます。
つまりは、「任意後見契約締結から、発行までの期間」と「ご本人が亡くなった後」の期間について、任意後見契約だけでは対応できない事になってしまいます。この空白の時間をケアするための対応措置を講じる必要があります。
見守り契約
見守り契約は、契約を結んだ後から任意後見契約の効力が発生するまでの空白の時間に対応するためのものです。
任意後見人になる予定の方が、ご本人が判断能力がある状態から、定期的にコミュニケーションをとり、任意後見契約の効力を発生させるタイミングを確認します。この契約を結んでおくことで、適切な申し立ての時期を逃してしまうリスクを防止します。
見守り契約は自由な契約のため、チェックの内容を「定期的に電話連絡で近況確認を行う」「2~3か月に一度、直接面会して、健康状態や生活環境のチェックを行う」といった内容でご本人の要望に沿った内容で決めることができます。また、ご本人の状況確認以外にも、大きなメリットがあります。
それは、将来、任意後見人になる方と、定期的に連絡や面会をするにより、多くのコミュニケーションをとることができ、信頼関係を構築しやすいという事と、任意後見が開始された後、自分に代わって代理行為をしてくれる人が「どういう人なのか」をじっくり見極めることができます。また、見守り契約中に、任意後見契約の見直しや解除という選択肢も検討することができます。
死後委任契約
「死後事務委任契約」は、任意後見契約では対応できないご本人が亡くなった後をサポートするための契約になります。ご本人の死後については、やらなければならない事務手続きが山ほどあります。代理権が消滅してしまえば、遺体の引取や葬儀に関すること、医療費の精算、施設や賃貸住宅の費用の支払いや退去手続き、その他の諸手続等の事務手続きをすることはできません。
死後事務委任契約の中で、死後の手続きに関する希望や「誰に何を任せるか」等を決めておくことで、葬儀・火葬・納骨等のこと、医療費の支払いや、施設の退去手続きのこと等について、自分の望むような形で、死後の手続きを対応してもらうことが可能です。