令和5年4月19日 「成年後見制度」勉強会

「成年後見制度」実務講義

行政書士木下涼太事務所 代表 木下涼太先生(元家庭裁判所職員)

成年後見制度とは、心身の障害や高齢によって、自己の意思決定能力が低下した成年に対して、その人の権利や利益を保護するために設けられた制度です。先生は、自身の経験から、成年後見制度についての基本的な知識や手続き、注意点などについて詳しく解説してくださいました。

成年後見制度の目的

認知症、精神・知的障害により判断能力が不十分な人(「本人」といいます)について、本人の権利を守る援助者(後見人)をつけることで、本人を保護し、法律的に支援する制度。

後見人ができること(やるべきこと)

・収入・支出、預貯金、不動産などの財産の管理
・本人との定期的な面談による生活状況・健康状態の把握、入院契約、施設入所契約、介護契約及びそれらに必要な調査
・悪徳商法や詐欺被害への対応(契約取消・クーリングオフなど)
・家庭裁判所への定期報告

典型的な利用事例

独居の本人が軽度の認知症を発症し、公共料金の支払い忘れや訪問販売などでの高額な商品の購入が頻発。在宅での生活は続けながらも、別居の子が後見人となり収支・財産の管理や悪徳商法の被害にあった際は契約の取消しなどを行う。(法定後見)

本人が認知症を発症し同居の親族もなく在宅生活が困難となった状況で、後見制度を利用し、後見人が持ち家を売却、それを原資に施設を入所。(法定後見)

子や身寄りが一切ないご夫婦の二人暮らし。将来どちらが認知症や病気になった際の生活や財産管理に不安を覚え、信頼できる専門家と任意後見契約を締結。定期的に面談をして生活状況・健康状態に変化がないか確認するとともに、将来必要に応じて介護サービスの契約や施設入所契約、財産管理を行う(任意後見)

任意後見と法定後見

法定後見

・認知症になった後、後見人が必要になったときに利用する
・家庭裁判所が後見人を決める。信頼できる親族や専門家を推薦することはできるが、決定権は家庭裁判所。(推薦の有無に関わらず、弁護士・司法書士等が選ばれる事がある)
・見ず知らずの弁護士などの専門家が後見人になる可能性がある→後見人との不和が起こりやすい
・財産の使途が制限される(相続税対策、親族への援助等)

任意後見

・認知症になる前に、将来に備えて利用する
・判断能力があるうちに、将来認知症になった時の後見人を、信頼できる人に頼んでおく(親族でも専門家でもOK)
・一般的に法定後見より費用がかかる(専門家の場合)
・将来の後見人を自分で自由に決められる→後見人との不和が起こりにくい

勉強会には、多くの行政書士青年会員が参加し、先生の講義に真剣に耳を傾けていました。参加者からは、「成年後見制度に関して、具体的な手続きや行際の問題、実際のケースについて理解が深まった」といった感想が寄せられました。

今回の勉強会により、参加者はより一層、成年後見制度について理解を深めることができ、今後の業務に活かすことができるでしょう。今後も、行政書士青年会では、様々な分野についての勉強会を開催し、会員のスキルアップに取り組んでいく予定です。

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