認知症に備えた対応

現在、日本では超高齢化社会が進んでおり、過去を遡った2012年時点でも軽度を含めて「4人に1人」の方が認知症に発症している。と言われており、社会問題に発展してきております。また、認知症の発症が確認されることで、さまざまな生活の制限が出てきます。ここでは、「認知症になるとできなくなること」と「認知症に備える措置」について簡単にご説明いたします。

銀行口座の凍結

預金者本人が認知症と判明した場合、銀行は、財産管理に必要な判断力が衰え、口座を第三者に悪用される恐れなどから、預金者本人の財産を守る手段として、銀行口座を凍結します。ただし、凍結のタイミングはあくまで銀行側が「認知症の疑いが強い」と判断した時点なので、診断されて即凍結。というわけではありません

また、口座が凍結されてしまうと、家族でも簡単にお金を引き出すことが出来なくなりますので、介護施設に入居するため預金から引き出して捻出したい。という場合でもそれが出来なくなってしまう恐れがあります。

不動産の売買等の法律行為ができない

認知症には、さまざまな症状がありますが、民法第3条2項には、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする」と明記されています。

不動産の売却は、法律行為の1つです。つまり、不動産の所有者が認知症となり、「意思能力がない、または疑わしい」ということになれば、不動産の売却によってどのような結果となるのか、十分に理解することができないため、不動産の売却は出来なくなってしまいます。

また、不動産の売却の当事者は、不動産の所有者であるため、不動産の所有者でない家族や親戚が所有者本人の同意を得ず、もしくは、同意を与えるための意思能力がない状態で所有者本人を代理して不動産の売却を行うことはできません

遺産分割協議に参加できない

意思能力がない。と判断されると遺産分割協議に参加できなくなります。なお「認知症」と言っても、軽度のものから重度のものまで程度の差がありますが、意思能力がないとされるのは、認知症のうち重度のものに限ります。

これらの状況に陥った時に対応するものとして「成年後見制度」があります。認知症の方・知的障がいのある方など判断する能力が低下すると、サービスや施設を利用するための契約などの法律行為や財産管理などを自分で行うことが困難になることがあり、このような方々に代わり、契約を行ったり、財産を管理するなどのサポートをするための制度になります。

成年後見制度は2つの分類に分かれております。

法定後見

すでに判断能力が不十分な場合、法定後見は、家庭裁判所によって成年後見人が選任されるもので、配偶者や子供、孫などが後見人の選任を申し立てることで手続きが開始されます。

任意後見

任意後見制度は本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と後見する人(任意後見人といいます)を、自ら事前の契約によって決めておく制度です(公正証書を作成します

任意後見制度は、元気で判断能力がある内に、判断能力が低下したときに備えておく制度です。任意後見人には、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないという義務があります。任意後見人を決める際は、信頼できる人であるのはもちろんのこと、自分にとっての最善を常に考えてくれる専門家を選ぶことをおすすめします。

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